産後の腰痛はいつまで続く?原因と回復の目安を柔道整復師が解説

「この腰の痛み、いつまで続くの?」
「出産してから、ずっと腰が痛い」
「授乳や抱っこのたびに、腰がズキッとする」
「そのうち治ると思っていたのに、なかなか良くならない」
産後の腰痛は、宇都宮整体院 咲にも多く寄せられるお悩みです。赤ちゃんのお世話で毎日が手一杯の中、自分の体のことは後回しになりがちです。でも、「いつまで続くのか分からない」という不安は、それだけで心の負担になります。
この記事では、柔道整復師の院長が、産後の腰痛がいつまで続くのかを研究データをもとにお伝えします。あわせて、痛みが長引きやすい人の特徴、今日からできるセルフケア、病院に行くべきサインも解説します。
まずはチェック:今のあなたの状態は?
当てはまるものを確認してみましょう。
☐ 出産から1〜2か月以内で、だんだん痛みが軽くなってきている
☐ 授乳や抱っこ、おむつ替えのあとに痛みが強くなる
☐ 産後3か月以上たっても、痛みがあまり変わらない
☐ 妊娠前から腰痛持ちだった☐ 妊娠中の腰や骨盤の痛みが強かった
☐ 痛みが怖くて、なるべく動かないようにしている
☐ 疲れやストレスがたまっていて、ゆっくり休めていない
上の2つだけなら、産後の体の変化と育児の負担による、一時的な腰痛の可能性が高いです。
3つ目以降に当てはまるものが多い場合は、痛みが長引きやすいタイプかもしれません。この記事の後半を参考に、早めに対策を始めましょう。
産後の腰痛はいつまで続く?
一般的に、出産後に体が妊娠前の状態に戻るまでの期間(産褥期)は、6〜8週間と言われています。多くの方は、この時期を過ぎるころから少しずつ痛みが軽くなっていきます。
ただ、研究データを見ると、すべての人がそうなるわけではありません。
アイルランドで初めて出産した女性を1年間追いかけた研究では、妊娠中に骨盤まわりの痛みがあった人のうち、産後3〜6か月でも約半数、産後9〜12か月でも約3人に1人に痛みが残っていました。強い痛みが続く人は少なかったものの、多くの人が日常生活に何らかの制限を感じていました。
つまり、「産後の腰痛は時間がたてば自然に治る」とは言い切れないのです。
産後に腰が痛くなる主な原因
1. ホルモンの影響で骨盤まわりがゆるむ
妊娠中から産後にかけて、出産に備えて骨盤まわりの靭帯をゆるめるホルモン(リラキシン)が分泌されます。産後しばらくは骨盤まわりが不安定になりやすく、それを支えようとする腰の筋肉に負担がかかります。
2. 腹筋や骨盤底筋の筋力が落ちている
妊娠中は、大きくなるお腹で腹筋が引き伸ばされます。出産では、骨盤の底で内臓を支える「骨盤底筋」もダメージを受けます。体を支える筋肉が弱くなると、腰の筋肉だけで姿勢を保とうとして、疲れや痛みがたまりやすくなります。
3. 育児の姿勢による負担
授乳、抱っこ、おむつ替え、沐浴。産後の毎日は、前かがみや中腰の姿勢の連続です。しかも、赤ちゃんの体重は日に日に増えていきます。
4. 睡眠不足と疲れ
夜中の授乳で、まとまった睡眠がとれない日が続きます。体が十分に回復できないまま、次の日の育児が始まります。
痛みが長引きやすい人の特徴
研究では、次のような人は、産後の腰や骨盤の痛みが長引きやすいことが分かっています。
・妊娠前から腰痛があった
・妊娠中の痛みが強かった、日常生活への影響が大きかった
・「動くと悪化するのでは」という不安から、体を動かすのを避けている
・産後早い時期のストレスが大きい
特に知っておいてほしいのは、最後の2つです。痛みが怖くて動かないでいると、体を支える筋肉がさらに弱くなり、回復が遅れてしまうことがあります。そして、ストレスも痛みが長引く原因の一つになります。体のケアと同じくらい、心と生活の負担を減らすことが大切です。
今日からできるセルフケア
育児の姿勢を見直す
授乳
授乳クッションや丸めたバスタオルで赤ちゃんの高さを上げ、ママが前かがみにならないようにしましょう。背中にクッションを入れて、もたれかかれるようにするのもおすすめです。
抱っこ
赤ちゃんを体から離して抱くと、腰への負担が大きくなります。できるだけ体に密着させて抱っこしましょう。床から抱き上げるときは、腰だけを曲げず、ひざを曲げてしゃがんでから持ち上げます。
おむつ替え・沐浴
床でのおむつ替えは前かがみになりがちです。ソファやベッドの上など、腰を深く曲げなくていい高さで行いましょう。
無理のない範囲で体を動かす
痛みが落ち着いてきたら、お腹の奥の筋肉(腹横筋)や骨盤底筋を意識したやさしい運動から始めましょう。仰向けでひざを立て、息を吐きながらお腹を軽くへこませるだけでも、体を支える力をつける第一歩になります。
運動を始める時期は、出産の状況(特に帝王切開の場合)によって違います。産後の健診で、医師や助産師に確認してから始めてください。
一人で抱え込まない
パートナーや家族に、抱っこや沐浴、夜の寝かしつけを分担してもらいましょう。体の負担が減るだけでなく、ママがまとまって休める時間ができることも、回復にとって大切です。
当院でも、パパ向けの整体教室を開いています。パパが抱っこや寝かしつけの正しい姿勢を知ることは、ママの負担を減らすことにもつながります。
こんな症状があれば、まず病院へ
次のような症状がある場合は、整体よりも先に、産婦人科や整形外科などの医療機関を受診してください。
・発熱をともなう腰の痛み・安静にしていても、夜寝ていても痛みが強い・足のしびれや力の入りにくさがある・尿や便が出にくい、またはもれる状態が続く・恥骨や尾骨のあたりの痛みが強く、歩くのがつらい・転んだ、ぶつけたなど、ケガのあとから痛い
授乳中の痛み止めの使用は、必ず医師や薬剤師に相談してください。
【院長の臨床経験から】
産後の腰痛の回復を分けるもの
産後の腰痛は、正直なところ、人によってかなり差があります。すぐに落ち着く方もいれば、何か月も続く方もいます。
これまで多くの産後のママを見てきた中で、回復の早さを分けていると感じるポイントがあります。
1. お腹の奥の筋肉(腹横筋)が働いているか
一番大きな差を感じるのが、体幹の筋肉、特にお腹の奥にある「腹横筋」の働きです。腹横筋は、天然のコルセットのように腰を内側から支える筋肉です。妊娠前から体幹の筋肉がしっかりしていた方と、そうでない方では、産後の回復に差が出やすいと感じています。
当院では、まず腹横筋のリハビリから始めます。特に、腹式呼吸の練習を続けていただくと、症状が落ち着き始める方が多いです。
2. 骨盤が前に傾いたままになっていないか
妊娠中は、大きくなるお腹に引っ張られて、骨盤が前に傾きやすくなります。産後もこの状態が残っていると、腰が反った姿勢が続き、腰に負担がかかります。
腹横筋に加えて、お尻の筋肉(臀筋群)のリハビリを取り入れ、骨盤が前に傾きにくくなってくると、腰痛も回復に向かっていきます。
3. 背中(胸椎)が硬くなっていないか
見落とされがちなのが、背中の硬さです。授乳や抱っこで前かがみの姿勢が続くと、背中の骨(胸椎)まわりが硬くなります。背中が硬くなると、骨盤の傾きが戻りにくくなり、回復に時間がかかります。
そのため当院では、お腹、お尻、背中のケアを同時に進めていきます。こうした産後のケアを行うと、回復が早い方が多いと感じています。
「骨盤矯正」だけに頼らないでほしい理由
産後の腰痛の原因は、一人ひとり違います。だからこそ、まずは体の状態をきちんと検査して、何が原因なのかを見極めることが大切です。
「産後は骨盤矯正をすれば元に戻る」というイメージをお持ちの方も多いかもしれません。ですが、骨盤をボキボキと動かすような施術だけで、産後の体が回復するわけではありません。体を支える筋肉を取り戻し、育児の中での体の使い方を整えていくことが、根本的な回復につながると私は考えています。
※回復の経過には個人差があります。痛みが強い場合や長く続く場合は、まず医療機関での検査をおすすめします。
まとめ:産後の腰痛は「時間が解決する」とは限らない
産後の腰痛は、多くの場合、産褥期を過ぎるころから少しずつ軽くなっていきます。ただ、研究では、1年たっても約3人に1人に痛みが残っていたというデータもあります。
痛みが長引きやすいのは、妊娠前から腰痛があった人や、痛みを怖がって動かない人、ストレスが大きい人です。だからこそ、「そのうち治る」と我慢し続けるのではなく、育児の姿勢を見直し、無理のない範囲で体を動かし、家族と負担を分け合うことが大切です。
産後3か月以上たっても痛みが変わらない場合や、育児に支障が出ている場合は、一度ご相談ください。宇都宮整体院 咲では、出産の状況や今の体の状態を丁寧に伺い、育児をしながら続けられるケアをご提案しています。

この記事を書いた人
宇都宮整体院 咲 院長 山田涼太
柔道整復師(国家資格)。整体院の院長を経て、2023年に宇都宮整体院 咲を開業。
保育園と連携した産後ケア教室やパパ向けの整体教室も行い、「なぜ痛いのか」を一緒に見つけ、再発しにくい体づくりをサポートしています。
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ご予約・ご相談
「産後の腰痛がなかなか良くならない」「育児をしながらできるケアを知りたい」という方は、お気軽にご相談ください。
追伸
ここまでお読みいただきありがとうございます。
今回の内容のように、産後の腰痛やその回復には、ホルモンの影響による骨盤まわりの不安定さ、妊娠・出産で弱くなった腹筋や骨盤底筋、授乳や抱っこなど、毎日の育児の姿勢、睡眠不足やストレスによる体と心の疲れが関わっていることが多くあります。
そのため、「産後の腰痛は、そのうち自然に治るはず」「痛いから、できるだけ動かないようにする」といった対処だけでは、痛みが長引いてしまう可能性があることが、研究データでも示されています。
実際に、「産後半年たっても、腰の痛みが変わらない」「抱っこや授乳のたびに痛くて、育児がつらい」「2人目の出産後、前より腰痛がひどくなった」という方の多くが、"育児の中での体の使い方と、体を支える筋肉の回復"へのアプローチが、これまでの対処に含まれていない状態です。
もし、・出産から3か月以上たっても、痛みが変わらない・発熱やしびれ、排尿排便の異常など、緊急性の高いサインはない・医師から、体を動かすことの許可が出ているこのような状況に当てはまる場合は、一度体の状態を確認し、回復に向けたケアに取り組むことを検討する価値があります。
当院では、出産の状況や今の生活リズムを丁寧に伺ったうえで、骨盤まわりの状態や筋力のバランス、育児中の体の使い方まで含めて評価し、「なぜ産後の腰痛が長引いているのか」を一緒に整理していきます。
無理に通院をすすめることはありませんので、「まずは自分の状態を知りたい」という方も安心してご相談ください。→ 詳しくはこちらの腰痛ページをご覧ください
参考文献
・Wuytack F. Pregnancy-related pelvic girdle pain in nulliparous women in Ireland: a longitudinal mixed methods study [thesis]. Trinity College Dublin.・Bergström C, Persson M, Mogren I. Pregnancy-related low back pain and pelvic girdle pain approximately 14 months after pregnancy – pain status, self-rated health and family situation. BMC Pregnancy and Childbirth. 2014;14:48.・Burani E, et al. Predictive Factors for Pregnancy-Related Persistent Pelvic Girdle Pain (PPGP): A Systematic Review. Medicina. 2023;59(12):2123.





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